フェテアスカ・レガーラ
フェテアスカ・レガーラは、ルーマニアで最も広く栽培されているブドウ品種で、冷涼な気候でも温暖な気候でも順応するその多様性が特徴です。
国内で最も消費されるブドウとして、非常に高い人気を誇り、ルーマニアのワイン文化に欠かせない存在です。ルーマニアワインを真に理解するには、フェテアスカ・レガーラを体験することが不可欠です。
起源
フェテアスカ・レガーラは、ルーマニアのトランシルヴァニア地方に起源を持つブドウ品種です。
この品種の親品種については、長年にわたりいくつかの説が存在してきました。ブドウ栽培家のヘニング (ジドヴェイ) は、古いトランシルヴァニアのブドウ畑で発見されたフェテアスカ・アルバ (Fetească Albă)種とデュンシェーリゲ (Dünnschälige)種との交配であると考えました。
ミューラー (アイウド) は、フェテアスカ・アルバ (Fetească Albă)種とホニグラー (Honigler)種 の交配であると主張しました。
また、ゲオルゲ・コンスタンティネスク (Gheorghe Constantinescu)氏、イオアン・ヘフナー (Ioan Höfner)氏、そしてその後継者であるフリードリッヒ・カスパリ (Friedrich Caspari)氏は、フェテアスカ・アルバ (Fetească Albă)種とグラサ・デ・コトナリ (Grasa de Cotnari)種の交配であると考えていました。
しかし、最近の分子解析により、フェテアスカ・レガーラの真の親品種はルーマニア土着品種の フェテアスカ・アルバ (Fetească Albă)種とフランクシャ (Frâncușa)種であることが判明しました。
歴史
この品種がトランシルヴァニア (Transilvania) で何千年もの間栽培されてきたという推測もありますが、確固たる証拠はありません。最初に記録された言及は、1880年代のさまざまな地元の出版物に遡ります。
当初、この品種の栽培は、ダネシュ村 (Daneș) のルター派教会の牧師であるリグナー (A. Ligner) 氏によって始められました。その後、マランクラヴ村 (Mălâncrav) のクラフト (A. Krafft) 氏という葡萄栽培家と協力し、栽培面積を広めました
1903年にクラフト氏は、ダネシュ村のボアルタシュ川のほとりに約1,000本のフェテアスカ・レガーラを植えました。これがダネシュにおける最初のフェテアスカ・レガーラのブドウ畑として記録されているため、この品種は「ダナシャナ (Dănășană)」という別名でも知られるようになりました。
1900年代初頭には、メディアシュ (Mediaș) 市で開催された農業展示会でのプロモーションを通じて、この品種がトランシルヴァニア地方のブドウ栽培者の注目を集めました。
1912年には、専門書に初めて「ガルベナ・デ・アルディアル (Galbenă de Ardeal)」や「ダナシャナ (Dănășană)」の名称で登場しました。
ドイツのブドウ栽培家フリードリッヒ・カスパリ氏は、この品種の可能性を認識し、最初は「デュンネスドルファー・ケーニヒザスト (Dünnesdörfer Königsast)」として、後に「ケーニヒザスト・ヴァイス (Königsast weiss)」として広めました。1917年に彼のカタログに掲載されたことで、この名が広まったのです。
1925年、フリードリッヒ・カスパリ氏は、ブカレストで開催されたワインフェアで初めて「デュンネスドルファー・ケーニヒザスト」という名称でこの品種を紹介しました。この品種から作られたワインには「フェテアスカ・レガーラ (Fetească Regală)」というラベルが付けられました。
同じ年、I.C.テオドレスク (I.C. Teodorescu)氏は、ブカレストのニコラエ・バルチェスク農業研究所 (Nicolae Bălcescu Agricultural Research Institute in Bucharest) にルーマニア初のアンペログラフィー(ブドウ品種収集)を設立し、「ガルベナ・デ・アルディアル (Galbenă de Ardeal)」という名称でこの品種を研究に取り入れました。
1957年に発行された『ルーマニアのアンペログラフィー』にもこの品種が掲載され、「フェテアスカ・レガーラ」や「フェテアスカ・デ・ダネシュ」といったシノニム (別名) で紹介されました。
語源
フェテアスカ・レガーラは、日本語では「王家の乙女」と訳されることが多いですが、元々の意味からは離れています。
品種名の「フェテアスカ」は、その親品種のひとつであるフェテアスカ・アルバから借用されたものです。
言語学的な分析によると、「フェテアスカ」という名前は、ルーマニアのヤシ (Iași)県スコビンツィ (Scobinți)コミューヌのフェテシュティ (Fetești)という村に由来しています。この村は12世紀まで遡る広大なブドウ畑で知られていました。
1631年7月9日、「モイセ・モヴィラ公は、コトナリとフルロウの間にあるヴォーダの丘(Dealul lui Vodă)の地域に位置するフェテシュティ村と、7つのブドウ畑をエウスタティエ3世に売却し、その所有権を確認した」とう歴史的な文書が残っています。
言語学者イオン・ヌツァ (Ion Nuță)によれば、フェテシュティ村の名前は「ファトゥ (Fătu)」または「フェテア (Fetea)」から派生したものであり、「ファタ」(少女)と接尾辞「-esc」からではないとされています。
シノニム (別名)
VIVC(国際ブドウ品種カタログ)によると、このブドウは35のシノニムを持ちます。
ルーマニアで最も一般的な別名は「ダナシャナ (Dănășană)」と「ガルベナ・デ・アルディアル (Galbenă de Ardeal)」です。
ハンガリーの別名には「ダノシ (Danosi)」、「ダノシ・レアニカ (Danosi Leanyka)」、「キラリ・レアニカ (Kiraly Leanyka)」があります。
ドイツ語では「ダネスドエルファー・ケーニヒザスト (Danesdoerfer Königsast)」や「ケーニヒリヒェ・メーデヒェントラウベ (Königliche Maedchentraube)」と呼ばれています。
ウクライナ語では「フェティアスカ・コロレフスカヤ (Fetyasca korolevskaia)」として知られています。
栽培地域
2023年3月時点で、フェテアスカ・レガーラはルーマニア国内で合計12,088.14ヘクタールにわたり栽培されており、これは国内の総ブドウ畑面積の6.78%を占め、ルーマニアで最も広く栽培されているブドウ品種となっています(出典: ONVPV)。
その多様性のおかげで、冷涼な地域から温暖な地域までさまざまな気候で順調に成長し、ルーマニアのブドウ栽培における重要な品種となっています。
ルーマニア以外でも、モルドバ(2019年時点で270ヘクタール)、ウクライナ、ハンガリー、チェコ、スロバキア、オーストリア、ドイツでも栽培されています。
ワインの特徴
フェテアスカ・レガーラは、他の白ブドウ品種と比べて比較的高いタンニンを含んでおり、熟成に適したワインを生産するポテンシャルがあります。
フェテアスカ・レガーラから作られるワインは、通常辛口または中辛口で、しっかりとした骨格を持ちます。果実味と酸味のバランスが非常に優れている品種です。アカシアやニワトコ、リンデンなどの花の香りや、夏のリンゴ、洋ナシ、モモ、グレープフルーツなどの果実の豊かな香りが特徴です。
この品種の代表的なスタイルを試したい場合は、ジドヴェイワイナリーのグリゴレスク・フェテアスカ・レガーラをおすすめします。天然酵母発酵による特別なワインを試したい方には、ヒストリアワイナリーのフルール・ロヤールがぴったりでしょう。
この品種は酸味が高い傾向にあり、スパークリングワインの生産にも理想的です。素晴らしい例として、スチンティ・ブリュット・ホワイト・フェテアスカ・レガーラがあります。
食事とのペアリングにおいて、フェテアスカ・レガーラは非常に汎用性が高く、さまざまな料理と相性が抜群です。具体的なペアリング例については、こちらにリストされたワインの詳細ページをご覧ください。
モルドバの土着品種ではありません
フェテアスカ・レガーラは、時折モルドバ原産の品種と誤って説明されることがありますが、実際にはルーマニアのトランシルヴァニア地方に起源を持つ品種です。VIVC(国際ブドウ品種カタログ)においても、ルーマニアのブドウ品種として正式に登録されています(登録番号 4121)。
出典
- Tiberiu Onuțu
- ONVPV
- Julius Kühn-Institut
- Caspari Mediaș
この文章は、ルーマニアのブドウ品種の普及に長年尽力されてきたティベリウ・オヌツ (Tiberiu Onuțu)氏の情報提供なしには書けませんでした。
この記事を通じて、日本におけるルーマニアのブドウ栽培の普及に少しでも貢献したいと考えています。
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